ソラタ
「アルティチュードホールドとGPSホールドって、同じホバリングじゃないの?」気圧センサーで高度を保つ仕組みと、GNSSとの役割の違いを整理します。
この記事の要点
アルティチュードホールドとは気圧センサー(バロメーター)を使って現在の高度を維持する飛行モード。スロットルを離しても同じ高さを保ち続ける。
気圧の急変(強風・建物の影・悪天候)で誤差が生じることがあるため、屋外での運用では気圧変動に注意が必要。
スロットルから手を離しても機体が上昇も下降もせず、同じ高さを保ち続ける。この高度保持機能をアルティチュードホールド(Altitude Hold)と呼びます。
アルティチュードホールドの主役は気圧センサー(バロメーター)です。高度が上がるほど気圧は低くなる原理を利用して、現在の高度を推定し、目標高度からのズレを自動補正します。
GPSホールドが水平位置を維持するのに対して、アルティチュードホールドは垂直方向(高さ)を維持します。
簡単に言えば、アルティチュードホールドは「空中に机を置いて、そこに機体を乗せておく機能」です。風で押されても、スロットルを触らなくても、気圧センサーが変化を感知して自動的に高度を元に戻してくれます。
地球の大気は高度が上がるにつれて気圧が低下します。この関係を利用したのがバロメーター(気圧計)です。
ドローンに搭載されたバロメーターは、現在の気圧を計測し、その気圧値から「離陸地点からの相対的な高度」を推定します。
| 高度の変化 | 気圧の変化 | センサーの判断 |
|---|---|---|
| 高度が上昇 | 気圧が低下 | 「上昇しすぎ」→スロットルを絞る方向に補正 |
| 高度が下降 | 気圧が上昇 | 「下降しすぎ」→スロットルを上げる方向に補正 |
| 高度が一定 | 気圧が一定 | 補正なし(現状維持) |
バロメーターはドローンのフライトコントローラー基板上に搭載されており、気流の影響を受けにくいようスポンジや発泡材でカバーされて保護されていることが多いです。
アルティチュードホールドの動作は以下の流れで行われます。
| 処理ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①目標高度の設定 | スロットル操作をやめた瞬間の気圧値を「目標気圧(目標高度)」として記録 |
| ②現在気圧の計測 | バロメーターが現在の気圧を継続計測 |
| ③高度誤差の計算 | 目標気圧と現在気圧の差から高度ずれを算出 |
| ④モーター出力補正 | 高度ずれを修正するようスロットル出力を自動調整 |
気圧センサーと合わせて、IMU(加速度センサー・ジャイロ)からの垂直加速度データも組み合わせることで、より精密な高度維持が実現されています。
機体に搭載される主なデバイスの種類と機能については、無人航空機の飛行の安全に関する教則(下図)でも一覧として示されており、高度センサー(気圧センサ等)とIMUの組み合わせが確認できます。
高度を表す方法には複数の種類があり、アルティチュードホールドで使う「気圧高度」と「GPS高度」は異なる概念です。
| 種類 | 基準 | 特徴 | 精度 |
|---|---|---|---|
| 気圧高度 | 離陸地点の気圧(相対値) | 離陸地点からの相対的な高さ | 気圧変動で誤差が生じる |
| GPS高度(ジオイド高) | GPS衛星による絶対高度 | 海抜からの高さに近い絶対値 | 垂直精度はやや低め(数m程度) |
| 対地高度 | 地面(地形)からの高さ | 実際に地面から何m上かを示す | 超音波・LiDARで計測 |
アルティチュードホールドは気圧高度(離陸地点からの相対高度)を維持する機能です。法令上の飛行高度制限(例:地表または水面から150m以内)は対地高度で考えることが多いため、これらの違いを理解しておくことが重要です。
バロメーターは気圧の変化を高度変化として解釈するため、気圧が外部要因で変化すると高度保持に誤差が生じます。
| 外部要因 | 影響 |
|---|---|
| 強風・突風 | 機体周囲の気圧が乱れ、センサーが誤読する可能性 |
| 建物の風下側 | 建物による乱流で局所的な気圧変動が発生 |
| 気象の急変(低気圧接近等) | 気圧の急激な低下→機体が「上昇した」と誤認識して下降補正をかける |
| プロペラダウンウォッシュ | 機体直下の地面に近づくと圧縮空気の影響で誤差が生じる |
強風・悪天候下ではアルティチュードホールドの精度が低下することを念頭に置き、飛行計画を立てることが重要です。
多くのドローンでは、低高度(地面から数メートル以内)では気圧センサーの代わりに超音波センサー(ソナー)を使って対地高度を計測します。超音波センサーは音波の反射時間から地面までの距離を計測するため、地面に近い場面での精度が気圧センサーより格段に高くなります。
高高度になると超音波の届く距離を超えるため、自動的に気圧センサーによる高度保持に切り替わります。この切り替え高度は機体によって異なります。
学科試験では「アルティチュードホールドが何を使って何を維持するか」が問われます。気圧センサー(バロメーター)を使って「高度(垂直方向の位置)」を維持するという点を確実に押さえてください。
また、「気圧高度は相対値(離陸地点からの高さ)であり、海抜からの絶対値ではない」という点も重要です。
混同しやすい用語
気圧高度(相対高度):離陸地点の気圧を基準として算出した高度。「今いる場所が離陸地点から何メートル上か」を表す相対的な値。
天候変化で誤差が生じる。
絶対高度(GPS高度・海抜高度):海水面(平均海面)や地球楕円体面を基準とした高度。GPSで取得できるが、垂直精度は気圧高度より劣ることがある。
Q1. アルティチュードホールドで主に使用するセンサーは何か?
A1. 気圧センサー(バロメーター)。高度上昇に伴う気圧低下を検知して高度を推定する。
Q2. アルティチュードホールドが計測・維持する「気圧高度」は何を基準にした高度か?
A2. 離陸地点の気圧を基準とした相対高度(離陸地点からの相対的な高さ)。海抜からの絶対高度ではない。
Q3. 低高度飛行時に気圧センサーより精度が高いセンサーは何か?
A3. 超音波センサー(ソナー)。音波の反射時間から地面までの距離を計測し、より正確な対地高度を取得できる。
アルティチュードホールドは気圧センサー(バロメーター)を利用して高度(垂直方向の位置)を自動維持する飛行モードです。高度が上がると気圧が下がるという原理を使い、目標高度からのズレを自動補正します。
気圧高度は離陸地点からの相対値であり、気圧の変動(強風・悪天候・建物の影)によって誤差が生じることがあります。低高度では超音波センサーと組み合わせることで精度を補完しています。
GPSホールドとアルティチュードホールドはそれぞれ水平・垂直の位置を維持する別の機能であることを理解しておきましょう。
参考資料
・無人航空機の飛行の安全に関する教則(国土交通省 第4版)
・無人航空機操縦者技能証明に係る学科試験の科目について(国土交通省)
※ この記事の制度確認日:2026年5月
学科試験対策|管理人の一言
「アルティチュードホールドは気圧センサー(バロメーター)を使う」「高度が上がると気圧は低くなる」という2点はセットで覚えてください。また気圧センサーは「相対的な高さ(離陸地点からの高さ)」を測るもので、海抜からの絶対高度ではない点も確認しておきましょう。
「強風や悪天候では気圧変動により誤差が生じる」という点も試験に出やすい内容です。