ソラタ
「GNSSって衛星からの信号なのに、なんでズレるの?どの程度のズレが出る?」大気や建物による誤差の種類と影響を整理します。
この記事の要点
GNSSの測位に影響する主な誤差源は、マルチパス(建物での電波反射)・電離層・対流圏遅延(大気による信号の遅れ)・衛星配置(PDOP)の3〜4種類です。
複数のGNSSシステムを同時受信するマルチGNSSを使うことで衛星数が増え、誤差を低減できます。
ドローンの自動飛行・ホバリング・リターントゥホームはGNSSの測位精度に依存しています。しかし、GNSSの測位には必ず何らかの誤差が生じます。
その誤差が大きくなると、位置がずれた状態でのホバリング・意図しない方向への移動が起きる可能性があります。
学科試験では「GNSS誤差の原因」「マルチパスとは何か」「PDOPとは何か」といった問いが出題されます。原因を種類別に整理しましょう。
一言でいうと、GNSSの誤差は「衛星からの信号が届くまでに"遠回り"したり"渋滞"したりすることで生じる距離の計算ズレ」です。直接届く信号が正確で、回り道や遅延があると誤差になります。
GNSSの測位誤差には大きく4つの種類があります。それぞれの仕組みと影響を整理します。
マルチパス(Multipath)とは、衛星から発信された電波が建物・地面・山などで反射し、直接波と反射波が混ざった状態で受信機に届く現象です。受信機は直接波と反射波を区別できないため、衛星までの距離を誤って計算してしまいます。
マルチパスが起きやすい環境は以下の通りです。
マルチパスの影響で測位が数メートル〜十数メートルずれることがあります。開けた場所・空が広く見える環境ではマルチパスの影響を小さくできます。
電離層(Ionosphere)とは、地球を取り巻く大気の上層にある、太陽放射などによって電離(イオン化)された層です。衛星からの信号はこの電離層を通過する際に屈折・遅延し、見かけ上の距離が実際より長く計算されてしまいます。
電離層遅延の特徴は次の通りです。
対策としては、電離層補正情報を含む補強信号(みちびきのCLAS等)を使用する方法があります。
対流圏(Troposphere)は地球大気の最下層であり、水蒸気・温度・気圧の変化が大きい層です。衛星信号はここを通過する際に屈折・遅延します。
対流圏遅延は電離層遅延より小さいですが、気象条件によって変動します。
PDOP(Position Dilution of Precision:位置精度低下率)は、衛星の配置がどれだけ測位精度に影響するかを示す指標です。衛星が空の広い範囲に分散して配置されているときはPDOPが小さく(精度が高い)、衛星が空の一方向に集中しているときはPDOPが大きく(精度が低い)なります。
| PDOP値 | 精度の目安 |
|---|---|
| 1〜2 | 非常に良好 |
| 2〜5 | 良好(一般的な測位に適する) |
| 5〜10 | 普通〜やや不良(精密作業には不向き) |
| 10以上 | 不良(位置精度が低い、飛行は慎重に) |
※ 上記はおおまかな目安です。詳細は各機体のマニュアルや測量基準書等でご確認ください。
マルチGNSS受信機では複数のシステムから衛星を受信するため、利用できる衛星の総数が増え、PDOP値が改善されやすくなります。
GNSS測位誤差の種類(マルチパス・電離層遅延・対流圏遅延・PDOP)については、無人航空機の飛行の安全に関する教則(下図)で整理されています。
GNSS誤差を小さくするための主な手段を整理します。
「マルチパス」と「マルチGNSS」は名前が似ていますが、まったく別の概念です。試験では混同を狙った問題が出ることがあります。
混同しやすい用語
マルチパス:衛星信号が建物・地面などで反射して直接波と混ざる現象。測位誤差の原因の一つ。
マルチGNSS:GPS・GLONASS等の複数の衛星測位システムを同時受信する仕組み。誤差低減の対策の一つ。
マルチパスとは別の概念。
Q1. マルチパスとはどのような現象ですか?
A1. 衛星からの電波が建物・地面などで反射し、直接波と反射波が混ざった状態で受信機に届くことで、衛星までの距離計算に誤差が生じる現象です。
Q2. PDOPが大きい(値が高い)状態は良いですか・悪いですか?
A2. 悪い状態です。PDOPは値が大きいほど衛星の配置が悪く(一方向に集中)、測位精度が低下します。
Q3. GNSS誤差を低減するためにマルチGNSSが有効な理由は何ですか?
A3. 複数のGNSSシステムを同時受信することで使える衛星の総数が増え、衛星配置が分散してPDOP値が改善されるためです。
GNSSの測位誤差には、マルチパス(電波反射)・電離層遅延(太陽活動の影響)・対流圏遅延(水蒸気の影響)・衛星配置誤差(PDOP)の4種類があります。マルチGNSS受信や補強信号の利用、開けた場所での飛行などで誤差を低減できます。
「マルチパス(誤差の原因)」と「マルチGNSS(対策)」の混同に注意しましょう。
参考資料
・電波法(昭和25年法律第131号)
・無人航空機の飛行の安全に関する教則(国土交通省 第4版)
・総務省 電波利用ホームページ
※ この記事の制度確認日:2026年5月
学科試験対策|管理人の一言
GNSS誤差の種類は「マルチパス・電離層遅延・対流圏遅延・衛星配置(PDOP)」の4種類をひとまとめに覚えましょう。PDOPは「値が小さいほど精度が高い」という方向性だけでも試験で役立ちます。
「マルチパス=誤差の原因、マルチGNSS=対策」の対比は試験でよく狙われる混同パターンなのでしっかり区別してください。